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便失禁、SNM

病気について>便失禁

便失禁の治療について

outline
便失禁とは

「便失禁(fecal incontinence)」とは、「自分の意思に反して便が漏れる状態」のことで、
生活の質を大きく損なうことが大きな問題になります。
最近の調査により日本で月に1回以上の便失禁を自覚している方は、65歳以上の方の7.5%、
20~65歳でも4%も存在することがわかっています。
しかもこれにより日常生活上多くの不安を感じ、社会活動への参加や旅行が億劫になるなどの
不便を自覚しているにもかかわらず、8割以上の方が医療機関を受診せずに悩んでいる実態が
近年の研究で明らかになりました。
しかし専門の外来を受診し問診や診察・検査を受けてその病態にあった正しい治療
(薬物療法・理学療法・手術療法など)を受けることにより多くの人がその効果を期待することが
できます。

便失禁の原因
cause

便失禁に至る過程には、括約筋の機能低下のほかに、便の性状や直腸の内圧、直腸の知覚、
結腸機能・認知機能などさまざまな要因が関係していることが少なくありません。
便失禁を来す病態には下記のように種々の原因があり、その原因に従った治療を進めていく
必要があります。

  • 内外肛門括約筋の機能低下

  • 肛門の手術によるもの(痔瘻・裂肛など)

  • 内肛門括約筋の切除を伴う直腸手術

  • 分娩時肛門括約筋損傷

  • 神経障害(脊髄損傷・中枢神経障害・陰部神経障害など)

  • 消化管の基礎疾患(過敏性腸症候群・慢性下痢症・直腸脱など)

  • 特発性便失禁(特定の原因なく便失禁を来すもの)

日ごろの便の状態や排便回数、便失禁の頻度、出産歴、消化管疾患の有無や手術などの既往、
治療中の消化器以外の疾患や服用中の薬剤などが関係している場合もありますので受診時に
担当医が問診などで確認します。

便失禁の症状の分類
symptoms

ひと言に便失禁といっても実際の症状には二つのタイプがあります。

1. 漏出性便失禁(passive fecal incontinence)

便意を感じることなく気付かないうちに便が漏れているタイプです。
多くは内肛門括約筋の障害が関係しており、便失禁の方の約半数がこれにあたります。

2. 切迫性便失禁(urge fecal incontinence)

便意を感じてトイレに行くまでに我慢が効かずに漏れてしまうものです。
外肛門括約筋の機能の低下や直腸容量の低下が多く関係しており、
特に若い男性に多くみられる直腸が過敏になっているもの(過敏性腸症候群)もあります。
便失禁の6人に1人はこのタイプです。
便失禁の3人に1人はこれら漏出性と切迫性の両方の症状を有しているといわれています。

肛門機能の検査
examination

直腸肛門機能検査

  • 肛門内圧検査(マノメトリー):安静にしているときの肛門圧(静止圧)と肛門をぎゅっと
    締めたときの圧(随意収縮圧)を調べます。

  • 直腸知覚検査(バルーンよる検査):直腸に風船を膨らませて、便意を自覚するボリュームや
    我慢のきく量を調べます。

肛門超音波検査

肛門括約筋の厚みや断裂の有無について調べます。

便失禁の治療
treatment

多くの患者は、まず生活習慣の改善や肛門機能訓練、薬物療法などから始めます。
それでも十分な効果が得られないときは外科的な治療を検討します。

保存的治療​

  • 食事指導、生活習慣の指導

  • 排便習慣指導

  • バイオフィードバック

  • 薬物療法(ロペミン・コロネルなど)

  • アナルプラグ

外科的治療​

  • 肛門括約筋形成術

  • 仙骨神経刺激療法 (SNM)

  • 順行性洗腸法

  • 人工肛門造設術

  • 肛門括約筋再検術(有茎薄筋移植など)

仙骨神経刺激療法
aboutSNM

これまでは外科的な治療として、損なわれた括約筋機能を回復させるために括約筋形成術や
人工物の注入や人工括約筋の埋め込みなど肛門自体への侵襲を伴う治療が試みられてきました。
しかし近年、欧米では仙骨神経刺激療法(SNM)が主流になっており※1、日本でも平成26年4月から
保険適応となり脚光を浴びています。これは仙骨神経に沿ってリード電極を植え込みペースメーカーの 様な小型の刺激装置※2を用いて電気刺激を断続的に与えるものです。

※1:米国およびEU27カ国で便失禁に対する治療機器として認可されています
※2:殿部の皮下に植え込みます。電池の寿命は3~5年といわれています

SNM装置

日本の臨床試験では8割を超える患者に有効性が確かめられています。
期待した効果が得られない場合でもリードを抜去することが可能なため、患者に優しい治療とも言えます。
特筆すべきは肛門括約筋の機能低下や一部の損傷が存在しても治療効果が期待できることです。
仙骨神経刺激療法が適しているかどうかは、種々の検査結果や保存的な治療結果などに基づいて決定する必要があります。
治療の適否など詳細については担当医にお尋ねください。

便失禁やSNMに関する詳細については、日本メドトロニック株式会社の啓発サイト
「おしりの健康.jp」に詳しい説明がありますのでご参照ください。

SNM使用概要
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